渉外離婚と国際裁判管轄

0b7bfa0accbe20f1e3698eba2a25c26a_s裁判管轄においては、判断基準の明確性が要求されます。しかし、他方で、離婚事件においては、原告救済の観点を最大限考慮すべきです。

なぜならば、離婚においては、原告がこれまでの夫婦関係から逃れ、新たな出発をするために訴えが提起されることが多く、原告救済の必要性が高いからです。

実際の裁判例においても、必ずしも「遺棄」や「行方不明」を要求していません。そして、生活実体などを考慮し、さらに、被告の有責性ともいうべき事情を認定し、実質的判断から日本に裁判管轄を認めているケースが多々あります。
以下、具体的にどのような場合に日本に裁判管轄を認めているかについて、実際の裁判例をご紹介します。

 

日本の国際裁判管轄を認めた事例①

①東京地裁平成11年11月4囗判決は、「日本に居住する日本人のアメリカ合衆国に居住する日本人に対する離婚請求訴訟につき日本の国際裁判管轄を肯定」した事例です。

当該判決においては、いずれの実母も日本に居住していること、準拠法が日本法であること、被告の来日回数や期間、未成年の子が日本に居住していることなど我が国との実質的関連性が考慮されています。

 

日本の国際裁判管轄を認めた事例②

②福岡地裁平成8年3月12日判決は、「日本在住の日本人妻から韓国在住の同国人夫に対する婚姻無効確認訴訟につき、我が国の裁判所に国際裁判管轄を認める」とした事例です。

当該判決は、いわゆる合同結婚式についての事案ですが、本件の場合、被告が韓国において未だ婚姻届を出しておらず、同居した事もなく、被告が本件訴状に対し何らの応答もしていないことから、条理上例外的に日本の管轄を認めました。

 

日本の国際裁判管轄を認めた事例③

③名古屋高裁平成7年5月30日判決は「当事者間の便宜公平、判断の適正確保等の訴訟手続上の観点から、当該離婚事件の被告の住所が日本にあることを原則とすべきであるが、他面、国際私法生活における正義公平の見地から、原告が遺樂された場合、被告が行方不明である場合、その他これに準ずる場合等特別の事情の存する場合においては、被告の住所が日本になくても、原告の住所が日本にあれば、補充的に日本に裁判管轄権を認める」とした事例です。

当該判決は、カナダに居住する同国人夫と婚姻していた日本に居住する日本人妻が、日本において、協議離婚届出を行ったところ、夫が日本の裁判所に離婚無効の訴えを提起し、これに対し、妻が予備的反訴として、離婚の訴えを提起した事案です。

当該判決は、夫について行方不明とまではいえないまでも、少なくとも常住居所が明らかでなく、本訴が原裁判所に継続中であることから、訴訟当事者間の公平という基本理念から、被告住所地主義の例外にあたる特別の事情が存すると判示しました。