中国人・台湾人の離婚問題
1 中国人(台湾人)と日本人の離婚の場合
離婚の準拠法
離婚の準拠法について、法の適用に関する通則法27条は、同法25条を準用し、① 夫婦の一方が日本に常居所地を有する日本人であるときは、日本法を適用すると定めています。
日本で手続を進めようとする夫婦のほとんどは、日本に常居所※を有するカップルですので、ほとんどのケースでは日本法が適用されると考えてよいでしょう。
離婚の方法
日本法が準拠法となる場合は、日本の法律が適用されるので、協議離婚、審判離婚、裁判離婚による方法が可能です。
中国・台湾における離婚の効力
しかしながら、これらの方法が日本人でない相手方配偶者の本国で有効とみなされるか否かは、各本国法で異なってきます。例えば、協議離婚については、日本では認められますが、多くの国では認められないケースもあります。
この点、中国・台湾は、いずれも協議離婚を認めています(中国婚姻法31条、中華民国民法1049条)。したがって、中国人、台湾人については協議離婚が可能です。
また、中国は調停離婚を認めています(中国婚姻法32条)。したがって、中国人については調停離婚が可能です。
しかし、台湾人については、日本の調停調書が承認されない可能性もあるため、少なくとも審判離婚を利用したほうがよいでしょう。
2 中国人(台湾人)間の離婚の場合
準拠法について
準拠法は、法の適用に関する通則法27条により、以下のとおり段階的に決定されます。
①夫婦の本国法が同一であるとき
→ その本国法
②夫婦が共通常居所地であるとき
→ その夫婦の共通常居所地法
③夫婦が共通常居所地でないとき
→ 夫婦に最も密接な関係のある地の法律
本国法の決定
中国人については、本国法の決定について、問題が生じます。それは、中国の離婚に関する法は、統一的に適用されていないからです。
まず、場所的に不統一です。すなわち、中国は、漢民族を中心として中華人民共和国婚姻法が適用される地域もあれば、香港特別行政区、マカオ特別行政区の地域ではイギリスの婚姻法と1966年ポルトガル民法が適用されています。
次に、人的に不統一です。すなわち、中国では少数民族に特例が認められており、民族自治区の条例と各民族の慣習法が併存しています。例えば、民族によっては、一夫多妻制度や近親婚などがあり、その婚姻、離婚について、慣習法が存在します。また、軍人や公務員には特別法や特例も存在します。
したがって、中国人間の離婚問題では、共通の本国法は中華人民共和国の婚姻法と安易に考えてはなりません。
したがって、国際離婚に詳しい専門家に相談されることをおすすめします。